うつ病
アメリカの研究なのですが、うつ病の有病率のことがあったので紹介します。
これは、ある時点での過去1ヶ月間にうつ病と診断可能な人の割合を調べたもので、数回テストをしているらしく、その結果は、1.0%~4.9%(平均2.8%)だったそうです。
なお別の研究からは、生涯でみた場合、うつ病にかかる可能性は15%程度という結果もあるそうです。ちなみに日本の調査(2002年/対象1600人)では、うつ病の有病率は2%で、生涯における有病率は6.5%だったそうです。
現在のストレス社会を反映した結果といえるかもしれません。
ただこれらの結果は、うつ病と診断しなくてもいいような軽いものや、別の疾患がある可能性があるなど様々なようです。
また例えば、一過性の心理的ストレスからうつ状態になったり、他の疾患(統合失調症やパニック障害など)の症状としてのうつ状態、さらに季節的や体調など、身体の変調からうつ状態になることがあるそうです。
このように広く「うつ」を定義した場合、私たちの周りには、このような状態に苦しむ人がかなり多いのです。
うつ病の症状
アメリカ精神医学会の定めた「精神障害の診断と統計の手引き(DSM)」の最新版「DSM-IV-TR」によると、うつ病の主要症状には2つあるそうです。
・抑うつ気分
・興味や喜びの喪失
抑うつ気分
これは気分が落ち込み、何をしても心が晴れない状態のことです。空虚感や悲しみなどもあるそうです。この「抑うつ気分」によく似た症状として、無価値感と呼ばれる、自分には何の価値もないと感じるものや、自殺念慮や希死念慮があるそうです。
これらをまとめてみると、毎日が嫌で気分も落ち込んで、自分には居る場所がなく、死にたいと思うというような訴えとなるわけです。
興味・喜びの喪失
これは発病前まで楽しんでいたことが、楽しくなくなり、感情が麻痺した状態のことです。この「興味・喜びの喪失」に似た症状として、気分の低下と易疲労性や、集中力・思考力・決断力の低下などがあるそうです。
これらをまとめてみると、何もする気が起きず、何をしても面白くなく、何もしていないのに疲れ、考えが何もまとまないというような訴えとなるわけです。
気分障害
気分障害の1つに分類される精神疾患が「うつ病」です。この特徴には、次のようなことがあります。
- 抑うつ気分
- 不安や焦燥
- 精神活動の低下
- 食欲低下
- 不眠
特に精神疾患は、脳の機能的・器質的な障害によって引き起こされる疾患のことになります。重篤なものは、統合失調症、躁うつ病、中等症などがあります。そして軽症のもは、神経症、パニック障害、適応障害などがあります。さらに精神的変調による内分泌疾患(身体疾患)を引き起こすこともあるそうです。
なお上記の「DSM-IV-TR」によると、うつ病は「major depression(大うつ病)」と呼ばれているそうです。
従来、うつ病とは「心(精神)の病」とされていましたが、近年の研究では「脳」の疾患であるとされているそうです。そしてその治療には、薬物療法がとられ、脳内に不足している脳内物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セトロニンなど)の分泌を促進させることで症状を改善させるそうです。
なお、うつ病の罹患率として男性よりも女性の方が罹患しやすいと言われされているそうです。
統合失調症、パニック障害
すぐに、うつ病と診断されるのではありませんが、うつ状態を示す他の疾患に統合失調症やパニック障害があります。
統合失調症
妄想や幻覚などの様々な症状を示す精神疾患のことです。今までは、精神分裂病と呼ばれていました。その発病率は、全人口の1%程度とされおり、それほど珍しい病気ではありません。
パニック障害
これも、うつ状態が見られることがあります。そもそもパニック障害とは、強い不安感がある精神疾患のことで、パニックアタック、パニックディスオーダーとも言われるそうです。
主な症状は、パニック発作、予期不安、広場恐怖、二次的うつなどです。特に、二次的うつは、予期不安や広場恐怖などの社会的に隔絶された状態が続くことで、自信を失くしストレスが蓄積して、うつ状態になるそうです。
また、パニック発作でもうつ状態になることがあり、これがうつ病と診断されることもあるそうです。しかしこれは、本来のパニック発作の二次的なもので、一般的にはパニック障害の症状とは別の疾患として区別されます。
子供のうつ病
最近は、子どものうつ病にも注目する必要があるそうです。特に児童期(12歳未満)のうつ病有病率は、0.5%~2.5%といわれ、さらに思春期以降の12歳~17歳では2.0%~8.0%なのだそうです。
特に子供のうつ病が軽い場合、イライラしたり、落ち込んでいるように見えるだけで、言葉で伝えることがないそうです。実際、それが「うつ」だということが、その成長過程の中で理解できていないのかもしれません。
そのため、頭が痛い、お腹が痛いといったことを訴えたり、不登校という行動になることもあるそうです。
子どもの場合、このように自分で症状を訴えることが難しいため、自分から病院で診てもらうことも難しいです。そのためにも、身近な大人たちが子供の行動変化や、ちょっと訴えにもきちんと耳を傾ける姿勢こそ、うつ病・うつ症状を重症化させないポイントになります。
うつ病治療
うつ病は、「精神障害の診断と統計の手引き(DSM)」を元に分類すると、大うつ病(症状の重いうつ病)と、気分変調症(軽いうつ状態が続く状態)に分けることが出来ます。
その一方で、臨床の世界では、内因性うつ病(心理的誘因が不明)と、心因性うつ病(心理的誘因が明確)に分けられるそうです。
内因性うつ病
なお、心理的葛藤に起因しない内因性うつ病では、その程度に関わらず一般の病気と同じように薬物療法がとられます。これは、本人と家族が病気であることを認識し、薬を飲んで快復に努めることになります。そもそも内因性うつ病とは、気持ち次第で変えられるわけではないからです。
心因性うつ病
その一方で、心理的葛藤に起因すると思われている心因性うつ病では、その原因を解決することが大切となります。中には、その誘因を取り除くとたちまち快復することがあるそうです。
ただし、うつ病を内因性・心因性の判断をするのは極めて難しく、精神科医の助言に従うことが大切となります。なお、入院もしくは外来による治療の選択は、症状の重症度で判断するそうです。
うつ病は、単なる心の風邪とは違います。本人の希死年慮や自己否定傾向が強い時ほど、医師の診断が必要になります。
子供のうつ病治療
子供のうつ病治療は、薬物療法になります。これは、三環系抗うつ薬を徐々に増やしていく治療法です。
さらに、子供を取り巻く環境の見直しも必要で、親子関係の見直しから、学校との綿密な連絡が大切になります。
また子供の場合、うつ病のことを言葉にするのが難しいことから、非言語的精神療法がとられることがあります。例えば遊戯療法や箱庭療法などを並行しておこなうわけです。
特に遊戯療法とは、基本的に子供に対する治療法で、遊びを主なコミュニケーション手段や、表現手段としておこなう心理療法になります。なお箱庭療法も一種の心理療法だそうです。
箱庭療法
箱庭療法は、心理療法の一種で、縦57cm×横72cm×高さ7cmの箱に、自由におもちゃを入れていくという治療法です。おもちゃは、特に決まっておらず、セラピストが用意したものを、自由に選び並べていくという、表現療法の1つだそうです。
そして作られた作品は、あとで説明したりして言語化することもあるそうです。ただし基本的には、見守られる中で自由に表現することが重要だそうです。
もともと遊戯療法として、子供を対象にしたものだそうです。特に児童期(12歳未満)や思春期(12歳~17歳)の子供は、複雑な概念や言語の構成が不得手で、遊びや象徴的な表現の中で自己表現する特徴が多いそうです。
このことからも非言語的な手法による治療として効果的とされ、現在では、成人や精神障害をもつ患者さんにも用いられるそうです。
心理療法
うつ病の治療には、三環系抗うつ薬などの薬物療法に加え、心理療法を併用することが効果的と言われています。
そもそも心理療法は、精神疾患(うつ病や統合失調症など)の治療に用いられます。この治療法は、心理的問題の解決したり、精神の健康を維持・増進させていくというものです。
なお臨床心理学の世界では、心理療法と呼ばれ、精神医学の分野では精神療法と呼ばれるそうです。
特に心理療法は、カウンセラー、セラピスト、治療者がおこない、心理療法を受ける人のことは、クライエント、患者、来談者と言うそうです。
なお心理療法の源流は、精神分析、行動療法、来談者中心心理療法だそうですが、他にもさまざまな学派があるそうです。
うつ病治療の選択
以前のうつ病治療は、電気けいれん療法しか無かったそうですが、現在では様々な治療法が確立されつつあります。ここでは主な治療法を紹介します。
電気けいれん療法(ECT)
電気けいれん療法は、頭皮の上から電流を流し、人工的にけいれんを起こす治療法になります。
近年では、薬物療法の効果が認められつつありますが、その効果には1週間~3週間程度は服用する必要があります。また実際には、効果が認められないこともあります。この場合、特に危険が切迫している時などは、即効性のある電気けいれん療法がおこなわれるそうです。なを有効性・安全性ともに高い治療法だそうで、保険診療でも認められているほどです。
経頭蓋磁気刺激(TMS)
頭の外側から磁気パルスで脳内に局所的な電流を起こさせ、脳機能の活性化を促す治療法です。しかし保険は、未承認になります。
薬物療法
うつ病に対する抗うつ薬の有効性は、臨床的に実証されているそうです。しかし即効的が無いため、1週間~3週間の継続的な服用が必要になります。
認知行動療法
これは、外の環境をどのように認識するかという、感情や気分をコントロールする治療法で、抑うつ的な気分の背後にある歪みを自覚することで、是正していくことを目的とします。
精神療法
一般的にカウンセリングと呼ばれる治療法です。
その他、実験的段階にあるものを含めると、断眠療法、光療法、運動療法、音楽療法などがあるそうです。