漢方薬

漢方治療とは、薬効のある動植物や鉱物である生薬(しょうやく)を複数組み合わせて用います。これが一般的に漢方薬と呼ばれるもので、生薬の配合の仕方や配分は、長年の臨床経験から体系化されているそうです。

この漢方薬は、穏やかに作用してくるのが特徴で、身体全体に作用し、現代医療のように、病巣だけに作用するのとは異なります。

なお現代医療で用いられる現代薬、すなわち西洋薬や化学薬の多くは、有効成分だけを分離して精製しています。このため非常に効力があり、治療の目標とする病巣部位に直接作用します。

漢方薬や現代薬には一長一短があります。ただ、からだ全体に穏やかに作用する漢方薬は、アレルギー性疾患、老人性疾患などの全身的な慢性疾患に有効とされ、用いられることが多いそうです。

日本における漢方治療は、昭和51年に厚生省が漢方薬の健康保険適用を承認してから、見直され広く普及されました。特に最近では、大学病院や公立病院でも漢方治療を取り入れた治療法が増えてきています。

さらに西洋医療と組み合わせることで、治療の効率化を進め、効果を発揮しているそうです。

ただ漢方薬にも、軽いとはいえ、副作用もあるそうです。そのため専門医の判断のもとで服用することが大切になります。


漢方薬の得意分野
近年では、現代医学で効果がなかった難病が、漢方医学で改善したという例を聞くようになりました。しかし漢方薬は万能薬ではなく、それは西洋薬と同様です。

癌治療などは、現代医学が効果をあげている領域といえ、同様に漢方医学が得意とする分野もあるわけです。漢方薬が比較的効果をあげている領域は、次のとおりになります。

  • 片頭痛、肩こりなどの習慣的疾患
  • 花粉症などの季節的疾患
  • 月経痛などの周期的疾患
  • 虚弱体質や冷え性などの流行性疾患

漢方薬の飲み方

漢方薬は、1日分ごとに生薬を水から弱火で煎じ出し、2回~3回に分けて食間に飲みます。特に漢方薬の吸収を効率良くするには、胃に食べ物などが滞留していない時のほうがいいのです。

ただ人によっては、漢方薬を食前に飲むとお腹が張ったり、食欲が無くなってしまうこともあります。この場合は、食後の服用でも構いません。

さらに生活リズムや仕事の都合で食間に飲めない場合、朝食前に1回目を飲み、2回目は夕食前か、あるいは夕食後に飲むようにしてもいいそうです。

一般的に煎じ薬は、温めて飲む方が、効果が高いと言われています。冷めてしまった場合は、その都度温めるといいです。ただし吐き気がある場合、冷たくして少しずつ飲むといいそうです。

さらに子供の場合、6歳~12歳なら大人の量の1/2、4歳~5歳なら大人の1/3、3歳以下なら1/4を、1日に2回~3回に分けて服用します。

煎じ方

漢方薬は、現代薬と異なり1日分を水で煎じて飲む必要があります。なお誤った方法では、漢方薬の有効成分を煎じ出すことができないそうです。

まず漢方薬を煎じるには、道具を揃える必要があります。さらに湯飲みなどのコップも、料理やお茶で使っているものとは分けておいた方が良いです。それは匂いが移るためです。

また煎じるのに適しているのは、素焼きの土びんです。ただ入手が難しい場合、普通の土びんや耐熱ガラスでも大丈夫です。さらに、アルマイトの鍋、やかんでも大丈夫です。ただ鉄びんは、生薬に含まれるタンニンが鉄と反応して化学変化を起こすそうなので、不向きといえます。

煎じ方

  • 1)容器の中に、漢方薬1日分と、水3カップ(600cc)を入れます
  • 2)ふたをしないで弱火にかけます
  • 3)ふきこぼれないように注意し、40分程度じっくりと煮詰めます。そして水が半量程度になったところで火からおろします

煎じる時の注意
ポイントは火加減で、40分程度で水が半分になる火加減が最適だそうです。例えば、それよりも短いと、漢方薬の有効成分が充分に煎じ出されず、逆に長いと煎じ出された有効成分が再吸収されるされるそうです。

そして有効成分が煎じ出されたら、茶こしでかすをこします。なお、かすをそのままにしておくと、有効成分がかすに再吸収されてしまうそうです。

副作用

漢方薬は、個人の「証」に合わせて用いるのが基本です。そして、当人の証に適していない場合は、症状を悪化させることもあるそうです。例えば虚証の人に対し、強力な下剤や発汗薬を用いるのは、適していないといえます。

なお証に合った漢方薬にも関わらず、不快な症状が生じる場合があります。これは、瞑眩(めいけん)と呼ばれるもので、副作用と症状が似ているため区別がつきにくいことが多いそうです。

しかし瞑眩の症状は、薬の服用を始めてからの最初の2日~3日間といわれ、その後は症状が治まり快方に向かうそうです。

なお別の観点でいえば、薬が身体に作用している証拠なので、漢方医学では好ましい反応とされます。

そこで副作用を起こしやすい漢方薬や、その副作用の症状を紹介紹介します。

副作用を起こしやすい漢方薬

  • 大黄:腹痛、下痢、食欲不振
  • 麻黄:食欲不振、多汗、不眠、動悸。重症の心臓病の場合、狭心症を起こす恐れもあるそうです
  • 甘草:むくみ、血圧の上昇。甘草は、鎮痛、消炎効果があるため、漢方薬の多くに含まれているので気を付ける必要があります
  • 附子:熱感、ほてり、発汗、しびれ
  • 地黄:胃のもたれ感

漢方医学

現代医学とは、「病気を治す治療法」ですが、漢方医学は「病人を治す治療法」と言うことができます。

つまり現代医学は、その病名に基づいた治療方針が用いられます。しかし漢方医学は、その人の体質や体力、抵抗力、さらに病気の進行の程度を意味する「証」に基づいて適した漢方薬が決められます。

このため現代医学では、同じ病気に対し、同じ西洋薬を処方されることがあっても、漢方医学では、その人それぞれに状況に応じ、違う漢方薬が選ばれるのです。

つまり漢方医学では、その人の「証」を正確に見定めることが治療の最大のポイントになるわけです。

そして漢方医学の代表的な「証」には次の3つがあります。

虚実 虚証と実証
患者の体質や体力の質的な充実度を示すもので、基本的、かつ重要な証になります。

陰陽 陰証と陽証
病気の進行具合と体力の消耗度を示すもので、病気の勢いや、その人の体力の関係を量的な面からとらえて割り出します。

気・血・水
これは、漢方医学における身体の生理機構を現す言葉になります。漢方医学では、身体が病気に犯されている状態と、病気の進行具合を意味する言葉として「病邪侵攻」という言葉が使われます。

虚実

虚実は、漢方薬を決める上で重要な鍵となる証の1つです。これは、病邪が体内に残っていないのに、当人の精気や体力が衰えている状態をいいます。

虚証タイプの特徴
皮膚や筋肉が軟らかく、やせ型、顔色が青白く、見るからに弱々しいことだそうです。このタイプの人には、体力低下を補う漢方薬がよく用いられます。

実証とは
一方「実証」は、病邪が体内に残っているのに、精気や体力が充実し、病気に対抗できる状態のことをいいます。

なお実証タイプの特徴は、皮膚や筋肉が硬く、緊張していることだそうです。また弾力性があり、がっちり体型で血色が良く、行動的なタイプの人だそうです。

このタイプの人には、強力な発汗作用や下剤など、病邪を追い出す薬を用いるそうです。

中間証とは
なお虚証でも実証でもない中間的なタイプ「中間証(間証)」というタイプもあります。

そもそも漢方薬とは、それぞれの人の「証」に基づいて決められ、たとえ同じ下痢症状でも、虚証タイプや実証タイプの人に用いられる漢方薬は同じではありません。間違って用いることで、かえって病状の悪化を招く恐れがあるためです。

陰陽

漢方医学では、病気を体力と病邪の闘いとしてとらえるそうです。そして陰陽は、この闘いにおける病邪の進み具合と、体力の消耗度のものさしと考えるそうです。

漢方医学の重要な「証」の1つの虚実が、体力の質的な充実さを示すものなら、陰陽は体力を量的なものを示すものと考えられます。

陰証とは
陰証の人は病気の状態が、消極的、静的、潜伏的、寒冷の傾向があります。特に、寒気を訴え、手足が冷えて顔色も青白いのが特徴といえ、熱が出ることは無いそうです。そのため、身体を温める作用のある附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)を含む漢方薬を用いて治療をおこなうそうです。

陽証とは
陽証の人は病気の状態が、積極的、動的、開放的、熱性の傾向があります。特に、炎症や充血、発熱などの症状が多いことから、身体を冷やし、熱を取り除く作用のある漢方薬を用います。例えば、桂皮(けいひ)や麻黄(まおう)などを含むものだそうです。

陰陽は、病気の進行具合と体力の消耗度から、病気の勢いとその人の体力の関係を量的な面からとらえます。特に病気のかかりはじめの、体力が病邪よりも優位にある時期を陽証期、病気が進み体力が病邪よりも劣った状態にある時期を陰証期といいます。

気・血・水

「気・血・水」とは、漢方医学における身体の生理機構を意味する言葉になります。

漢方医学では、身体が病気に犯されている状態と、病気の進み具合を意味する「病邪侵攻」という言葉が用いられます。そして「気・血・水」は、身体のどの部分が、病邪侵攻を受けているかを中心に考えるそうです。


漢方医学の考え方には、「気」というエネルギーが、身体を循環することで健康な生活を送ることができると考えられています。

しかし気の流れが滞ると、身体に異常が生じ、この気の滞りが神経や精神機能に障害があると考えらえられています。例えば、気が上にのぼった状態では、のぼせ感があるため、流れを正常に戻す順気剤が用いられるそうです。


これは、ホルモンや血液にあたるもので、これらの循環に支障が生じ、血液が滞っている状態が「お血」だそうです。この状態を改善するのが、駆お血剤になります。


これは体液のことで、例えば水毒は、体液が身体の一部に偏っている状態のことで、水分代謝の不調が考えられています。そこで利尿剤が用いられるそうです。

なお病気というのは、気・血・水のどれか1つが原因になるわけではなく、複合的に関連することで症状が現れると考えられます。